ごあいさつ
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「先端」の価値をシフトし、次へ。

 

「先端」という言葉からは、多くの場合、個を極めて突出した状態をイメージします。東京大学先端科学技術研究センター(先端研)の歴史に残る破天荒でユニークな研究者たちは、まさにそのように尖りながら、これまで多くの成果を残してきました。

いま私たちの社会が立ち向かう課題は複雑極まりなく、一つの領域に特化したスペシャリスト、つまり、個々に突出した点としてだけの先端では、もはや太刀打ちできません。ひとつひとつの研究は、盤石な基礎研究の上に展開する卓越したものでありながらも、常に異分野を意識し、刺激しあい、自由につながる機会を持つ有機的な「面」が隆起して生まれる点 – 先端 – にこそ、複雑な社会課題を突破する力があると考えています。

先端研が設立されるまでの道のりでは、組織の破壊と創造が繰り返され、最終的に、過去の延長線上ではなく「人間と社会に向かう先端科学技術の新領域の開拓」を目指した現在の先端研が誕生しました。

設立から30年。昔と比べて普通になったと言われようが、私たちは「過去を振り返らず、現在と未来を見つめる」という先端研のDNAを引き継ぎ、既成の先端ではなく、自ら価値をシフトした先端に向かって、挑戦を続けます。

未来を見据えた新しい研究、研究環境と体制、人材育成や産学連携など、先端研のさまざまな「面」を強め、拡げていくこと。多様で柔軟な発想と場にさらなる勢いを与え、社会課題を突破して未来を豊かにする「先端」を生み出すこと。その情熱の源を、国内外の多くの方々と共有したいと思います。そのために、私たちは全力を尽くします。

 

東京大学先端科学技術研究センター 所長
神崎 亮平