先端研が30周年を迎えるにあたって、専門性の垣根を超えた先にある、未来のことを考えよう──
そんな想いを共有する先端研の若手研究者同士が向き合い、分野を横断する自発的な対話が始まった。
気候へ、細胞へ、チャレンジする心を育てる。
2017年、東京大学先端研30周年を記念してスタートした『対話する「未来論」』のシリーズが、ついに最終回を迎えた。今回の対談は「DNAバーコード」というしくみを使って細胞を高速に追跡する技術等の研究開発に取り組む谷内江望准教授と、コンピュータの中の地球を動かして、シミュレーションで異常気象など気候変動の解明を目指す小坂優准教授。先端研という環境の中で、何を受け継ぎ、育むのか──研究から後進育成へ、未来を見つめる2人の対話が、シリーズを締めくくる。
高齢と障害を越えて、みんなが働く未来を支援する。
ICT(情報通信技術)を活用した高齢者の社会参加と就労支援に取り組む檜山敦講師。そして、障害のある子供たちの教育支援に取り組む中から、その先にある就労の支援へと向かう近藤武夫准教授。対話する「未来論」第9回は、当30周年記念対談企画をきっかけに共同研究がスタートしたという2人が、オンゴーイングな研究を語り合った。
渋滞解明で、知財で、人と社会をスムーズにする。
対話する「未来論」第8回は、薬学の経歴を活かしつつ知的財産の法的課題に取り組む桝田祥子准教授と、流体力学をベースに渋滞学の進化を担う柳澤大地准教授。どちらも社会へ大きく貢献する研究テーマだが、2つの研究は「同じ建物にいるのに、全然違う」──そこでまずは互いの自己紹介から、対話が始まった。
風車とスピンをめぐって、会話は回る。
第7回を迎えた今回は、さまざまな系のハイブリッドでマクロな量子力学的現象に挑む宇佐見康二准教授と、流体力学とシミュレーションを駆使した風車の開発・制御・スマートメンテナンスを手がける飯田誠特任准教授。翼150メートルもの風車からナノスケールの量子スピンまで、再生可能なエネルギーを巡って会話が弾んだ。
虫を知る、当事者を考える、そして交信する。
学内を車椅子で移動している先生がいる……という出会いをきっかけに、熊谷准教授の当事者研究の講義に参加するようになったという並木特任講師。「先端研の中では一番当事者研究の全体像をシェアしていただいている先生」と、熊谷准教授は言う。その並木特任講師は、「小さい頃から科学者になろうと決めていた」というところから徐々に「虫」の世界へ。「未来論」第6回、エアコンの動作音が響きわたるほどの静かな対話から、それぞれの研究への熱い興味が立ちのぼった。
「表面こそ最前線」の着想が発明をリードする。
第5回を迎えた対談は、シミュレーションと実験によって、金属等の構造材料とその界面を解明・制御し、その強度としなやかさを追究する井上純哉准教授と、有機合成化学と生命科学が交差する領域で、狙ったタンパク質や細胞を制御する「化学ツール」づくりに挑む山口哲志講師の二人。分子レベルの工学的なデザインに注目すると、互いが挑む研究開発に意外な共通点が見えてきた……。
対話の中からインスピレーションが共起する。
対話する「未来論」第4回は、生命の複雑な機能を支えるメカニズムに注目し、これを測定する道具づくりから、数理解析、福祉機器への応用開発までを手がける光製造科学分野 小谷 潔准教授と、ポケットに入れて持ち歩けるヒューマノイドロボットで知られる人間支援工学分野の高橋 智隆特任准教授。人とロボット、人と環境など、さまざまな間をつなぐコミュニケーションとその未来について、互いの気づきを誘発する対話が進められた。
社会を変えるチカラは呼応する。
対話する「未来論」第3回は、身の回りにあるテクノロジーを利用した支援技術開発に取り組む巖淵 守准教授と、レーザー技術を中心に光通信の幅広い融合的応用に取り組むセット ジイヨン准教授。二人はもともと、とても近い分野を専攻しており、現在に連なる研究の起点は、前世紀の終わり、1990年代のイギリスにさかのぼるという──。
研究開発への努力と希望は重なり合う。
対話する「未来論」第2回は、主にマイクロのオーダーの微細加工技術でスイッチやアクチュエータ等を実現するデバイス「MEMS(微小電気機械システム)」に取り組むティクシエ三田 アニエス准教授の研究室を、水環境汚染の調査や水処理技術の研究開発に取り組む小熊久美子准教授が訪ねた。MEMSに期待される生物・医療などの幅広い応用分野を、融合研究を通じて拓いていくティクシエ准教授のひたむきな挑戦と、水を切り口に安全な社会を実現すべく世界中を飛び回る小熊准教授の粘り強くしなやかな挑戦が重なり合う。
イスラームの宗教と脳の機能は交差する。
第1回は、既に共同研究も立ち上がりつつあるという、イスラーム思想・中東地域研究を専門とする池内恵准教授と、リバースエンジニアリングの手法で知能や意識が創発する脳の「機能」に迫る高橋宏知講師の二人。対話は冬晴れの午後、東京大学駒場第二キャンパス・池内研究室にて行われた。